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薄桃色にこんがらがって それでも人生は続く(2020/02/29)

気付けば前回の記事から丸一年以上が経っていた。

 

自分の中でこのブログの意義はその時感じた色々なコト、すきなモノに関して、新鮮な気持ちを噛み砕いて書き残して置くこととしてます。

そういう意味ではこの一年、この気持ちをずっと大切にしたいと思う出会いがたくさんあったけれど、まぁ生来の筆無精が祟りTwitterに気持ちを垂れ流しては満足しを繰り返してました。だってTwitter楽しいじゃん。楽だし。

でもいよいよそうも言っていられなくなる出会いがあったので、こうして一年ぶりにブログを書いています。皆様もうお分かりかと思いますが、遂に愛するアイドルマスターシャイニーカラーズ(シャニマス)について語る時が来てしまった。しかも、担当のイベントという形で。

 

というわけで、当記事は去る2月29日(閏日!)から開催されているシャニマスのイベント、『薄桃色にこんがらがって』の内容を含む記事となっております。徹底して担当である桑山千雪視点で語っていきます。

未読の方は自己責任で。よろしくお願いします。

 

 

 

なんて書き出したは良いけど、正直何を書けばいいかさっぱりわからない。頭にぼんやり薄桃色の霞がかかって、思考はこんがらがったままで、今この文を書いてる段階では、本記事のタイトルさえ決めあぐねている。

わざわざこんなブログを見に来てくれている人に対して、今更イベントの内容についておさらいするつもりもない。かと言ってピンポイントでここがいい!ここが最高!という話もしにくいイベントシナリオだった。

ただ、今日ここに到るまでなんとなく感じてきた「ああ、シャニマスは"寄り添ってくれている"んだな」という気持ちが『Star n dew by me』で爆発し、今回の『薄桃色にこんがらがって』で心臓を一突きされ、絶命したオタクは自分以外にもかなりいたんじゃないかと思っています。

 

そう。「何があっても大丈夫」を一つ深い段階で掘り下げて、提示してきた衝撃があったのかもしれない。

つまるところ、この場合の「何があっても大丈夫」は「何があっても最後はハッピーエンドになる」じゃない。言うなれば「ハッピーエンドじゃなくても大丈夫。あなたの人生は続いていくし、あなたの大切なものは壊れない」である。

衝撃だった。だって、めでたしめでたしのエンドロールが流れなかったんだもん。それでも、これを読めて良かったと心から思えた。

恐れながら一歩踏み出して、傷付いて終わった貴女の姿が、そうして大人になる貴女の姿が誇らしく、美しいと思えた。それは時にどんなハッピーエンドよりも優しく、我々の心に小さなぬくもりを灯してくれる。シャニマスにはこれが出来るのかとひっくり返った。ライターと夜通し酒を飲みたい。話を聞かせてほしい。

 

シャニマスにおける自分の担当は、幽谷霧子、有栖川夏葉、そして桑山千雪の三人である。

霧子と夏葉に関しては、サービス開始直後からこの子達が担当だと思っていた。千雪に関しては、少し遅れて『満開、アルストロメリア流幸福論』と【マイ・ピュア・ロマンス】のコミュを読んで担当しようと思ったのを覚えている。

けど、何がそこまで刺さったのかと言われると、正直あまりハッキリとは覚えていない。今思えばただただ物語の構成の凄まじさに唸ったのと、「この人がどんなアイドルになっていくのかを見てみたい」だったのかもしれない。

それまでの3ユニットのイベントを経て見ても、シャイニーカラーズの世界はどこまでも優しかった(今にして思えば、結構なロングスパンで成長に対する"壁"が設定されていると舌を巻く)けれど、アルストロメリアのイベントは千雪の『優しさ』が壁になっていた。だからこそ、双子に手を引かれて一歩を踏み出した彼女が、その後どうなっていくのか見守りたいと思ったんだと……思う……多分……

 

で、それに対する答えが感謝祭を経た、この『薄桃色にこんがらがって』である。

もう、感謝である。これが読めるとは。別にゲームのライターをやったことがあるわけじゃないけれど、絶対に避けるテーマだもん、これ。このシナリオパックいくらだっけ。基本無料?マジ?これで?と頭がおかしくなる。

このイベント、実は過去のイベントと比較して"何が刺さったか"が一番分かれるイベントじゃないかと個人的には思っている。主線のテーマすら、受け取る人によって変わってくる気がしているので、個人的にここが刺さったという話をしていきたい。

 

■アイドルとして"戦う"こと

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これである。

アンティーカならわかる。ストレイライトでもわかる。でも一番最初にユニット内でこれをやったのが、『未来への憧れ』の花言葉を背負ったアルストロメリアであり、大崎甘奈と桑山千雪というアイドルであることが、このコンテンツの持つ"パワー"の証明になり得るってくらい、もう、好き……としか言えない。シンデレラガールズの論で言えば、『頂点は1つしかない』『誰よりも強く光れ』である。でもこれは歌じゃない、シナリオである。すなわち物語として、勝者と敗者を明文化している。

そうして人を羨んで、戦って、負けた千雪の口から溢れる「悔しいなぁ」の言葉には、言葉にしきれない価値がある。自分が"アイドルもの"に求めて、でもなかなか見ることができないものが目の前で展開していく様子に、心臓がバクバクなったのを感じた。

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これに関しては、見たもの感じたものがストレートに全てなのであまり多くは語らない。ただただ、「そりゃ、悔しいでしょ」「ちゃんと言えたじゃねぇか」「聞けてよかった」である。なんだこの構文、便利だな……

 

■"桑山千雪"を形づくってきたもの

 お気に入りの千雪のコミュの一つに、2019年春に開催された『ピクニック・バスケット』イベントの報酬、【トキ・メキ・タコさん】に収録されている「トーキング・トースト」がある。

内容は「あまりラジオを聴かない」という大崎姉妹に、「ただのまねっ子だけど」と言いながら千雪がラジオパーソナリティの真似をして、『トーキングトースト』というラジオ番組のゲストとして二人を招き、仕事への意気込みをインタビューする、といったものだ。初めてこのコミュを読んだ時、ウキウキでラジオパーソナリティごっこ”をする姿がとても「千雪らしい」と思ったのを覚えている。まさかこの一年後にひっくり返ることになるとは露と知らずに……

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その後一年間、この『トーキングトースト』について触れられることは(記憶している限り)なく、一つの”千雪らしい、かわいいエピソード”として消化していたところに今回の”アプリコット”である。この見せ方が何というか、上手い。

これはあくまで持論ではあるが、二次元のキャラクターを形作るものは”設定”であり、その”設定”に説得力を持たせるものが”描写”である。そしてこの”描写”は、積み上げれば積み上げるほど強い代わりに、バランスを欠くと”設定を補強するためのもの”に陥ってしまいがちである。

我々は二年間、桑山千雪を見てきた。元雑貨屋、裁縫が得意、小物や花や物語が好き、クマの騎士さん、トーキングトースト、「全然、大人じゃないんだもん」……たった数日前まで、それらはバラバラに散らばった”千雪らしさ”のピースたちだった。でも二年かけて積み上げられたそれらのピースは、実は組み合わせると”アプリコットらしさ”になるのではないかという可能性を、この”アイドルとしての桑山千雪”の物語の大一番まで溜めて、いきなり提示してきた(俺なら我慢できずに半年で語っちゃうし匂わせちゃう)。まるで遅効性の毒を気付かぬ内に少しずつ盛られていたような気分になった。

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結果として、”桑山千雪にとってのアプリコット”の重さ=大切さが、この2年分の桑山千雪の描写の重さ=説得力となって我々にのしかかってきたのである。そうして我々は桑山千雪にとってアプリコットがどれだけ大切な思い出なのかを”実感”させられたのだ。聖典じゃんこんなの。

 

■”過去への憧れ”は否定されるべきものか

個人的に今回、一番刺さったのがこれ。

千雪にとっても、アプリコットは手元に残していたとはいえ過去だったはず。でも甘奈が復刊するアプリコットのカバーガールのオーディションのオファーを受けるとなった時、いても立ってもいられずに”戦う”ことを決意する。

ここがまずアルストロメリアのもつ『未来への憧れ』のキーワードに反していた時点で、正直少し、いやな予感がした。アプリコットのカバーガールへの憧れ自体が否定されるような物語が展開されるのではないかとヒヤッとした気分で読み進めた。

 

結論から言うと、シャニマスはいつものように何一つを否定しなかった。これはもうライターの信念なんでしょう。登場人物の誰一人、何一つさえ明確に否定されることがないままオーディションが終わった。 

 

ここから猛烈に感動したのが、イベント報酬sSSR【ドゥワッチャラブ!】桑山千雪のコミュ群で描写された千雪のアプリコットからの”卒業”が”「捨てること」でも「誰かに譲ること」でもなく、「段ボールに詰めて、実家に送ること」だったこと――つまり、「その気になれば取り出せるところにしまうこと」だったことである。

”過去と決別する”という言葉をどうにも飲み込めない人間なので、この描写は本当に救われた気がした。ちゃんとけじめをつける必要なんてない、お別れも必要ない。その気になれば会えるところに、そっとしまうだけでいい。いつか会いたくなったら、また会いに行って、少し話をして、またそっとしまえばいいだけなのだから。


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そうして最後の最後、イベント報酬の最後のコミュで『過去への憧れ』を徹した千雪がそれをきっかけに『未来』を手にして、ようやくエンドロールが流れる。と見せかけて、多分流れない。

過去の憧れは自分の一部になって、人生は続いていく。いい時もそうじゃない時も含めて、こんがらがってわやくちゃになったり、まっすぐに伸びたりしながら、どんな時も三人で手を繋いで歩いて行ってくれたらいいなぁと思う。

 

 

アイドルマスターシャイニーカラーズさん、総じて素敵なイベントをありがとうございました。本当に、担当メインでこんな素敵なイベントが見られて感無量でした。 

本当は甘奈や甜花、アルストロメリアについてももっと語りたいけどそれやりだすと余裕で一万字超えそうなのでこの辺で。

 

オタク、スプパと2ndで死のうな。